いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
一瞬、ここは何処かと焦ったが
窓外を流れるオレンジ色の景色を見て溜息を吐く。
左肩の温もりに視線を遣ると
目を瞑った彼が寄り掛かっていた。
おそらく意識はある。
けれど、身を起こす気は無いらしい。
再び窓外に目を向けると、橋を渡るところだった。
景色はひらけて、水面の反射が美しかった。
このまま、どこまでも行けそうな気がする。
そう嘯く心に小さな針が刺さる。
彼とふたりでなら何も怖くない。
僕は彼がいちばん怖い。
橋を渡り終え、ビルの間へと吸い込まれた。
少し暗くなった車内に明かりが点く。
白くなった視界からはドライアイスの匂いがした。
左肩はまだ温かい。
夜の足音を聞きながら、ぼんやりと瞼を重くする。
瞼の裏には月が見えた。